神宮ばら園は、神宮参拝者や神宮会館利用者に心の潤いを与え、神宮外苑の名所とするため三重県ばら会の助勢を得て、昭和62年10月に開園しました。
春と秋にはバラ花を神宮に奉納して、三重ばら会のばら展が開催され、多くの方々が来園されます。
雪の如く咲く花に例えて名付けられた「如雪園」の一画に春秋、150種、450株のバラが咲き乱れる「神宮ばら園」。
プリンセス・マサコ、ミチコ、アイコなどの艶やかな色と香りをお楽しみください。
神宮ばら園開設のきっかけとなったのは、当時の三重県ばら会会長・清水武夫氏よりのバラ苗の献納でした。
現在園のある辺りは、もともと内宮禰宜・中川経高の山荘があったところで、その庭園には雪が降る如く花々が咲き乱れていたといい、一帯は「如雪園」と名付けられていました。神宮のお膝元に花の名所を復活させ、参拝者にひととき目の保養をしていただこうと、花園が造られたのです。
開園当初は57種、300株が植えられました。その後、岡山市のRSKバラ園や、山陽放送株式会社など、いくつかの企業や個人から苗の献納があり、三重県ばら会の協力を得て、現在では150種、450株が咲きほこる見事な花園へと成長しました。
つるバラのトンネル・アーチをくぐった園内には、休憩舎と散策道が設けられ、品種毎にプレート表示された多種多様なバラが迎えてくれます。
来園者に人気があるのは、ビロードのパパメイアン、紅茶色のブラックティーなど。また、ソプラノ歌手のマリアカラス、宝塚歌劇団の天津乙女、第16代アメリカ大統領リンカーンなど、世界の著名人にちなんだ名を持つバラも印象に残るようです。
園の東側、神宮会館と隣接する斜面に、ほかの花と独立して並び植えられているのがプリンセス・ローズ。プリンセス・マサコ、ミチコ、アイコなど、どなたもご存知の高貴な名が冠された美しい花に、皇女のお姿を重ね合わせて、ぜひご鑑賞ください。
園内のバラの多くは、開園当初に植えられたもので、もはや老木の域にさしかかっています。もともとバラは四季咲きの花ですが、 神宮ばら園では春(5月)と秋(10月)の2シーズンだけ開花させ、それ以外の季節につけた蕾は摘み取っています。
それは、木の負担を少なくし、開花時期を合わせて来園者に花盛りを楽しんでいただくため。ただし、一年を通じて手入れは欠かせません。
冬から春先にかけては、施肥などの土づくりと、草の発生を抑え表土の乾燥を防ぐ藁敷き。つるバラの誘引などもこの時期に行われます。春と秋の開花前には、剪定と芽欠き(蕾の摘み取り)をし、開花後はすみやかに花を摘んで木を休ませます。もちろん、害虫の防除も怠ることはできません。こうして来園者を癒し、感動させてくれる美しい姿を見せてくれるのです。
春と秋の見頃に合わせて、神宮会館西館ロビーでは、伊勢ばら会による「ばら展」が開催されます。切り花や鉢植えなど、いくつかの部門で優秀賞が選ばれます。
また、苗や肥料の販売もあり、バラを育てたい方は、ばら会会員や園の管理者に、手入れの仕方などを気軽に相談できます。
同会では、2月と9月の剪定適期にも講習会を開き、愛好家の拡大に努めています。
秋、伊勢神宮の神苑では国を代表する花である菊が展示されますが、すぐ近くの神宮会館裏山に、おとぎの国のようなバラの花園があることを知っていただき、参宮の帰りにぜひ、美と芳香をお楽しみいただければと思います。
また、神宮ばら園には、俳祖荒木田守武の「元日や神代のことも思はるる」の句碑が建立されております。